副業の消費税「2割特例」、2026年で終了
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インボイス登録した副業事業者の消費税を軽くしてきた「2割特例」は、個人事業者の場合、2026年分(2026年1月〜12月の課税期間)の申告が最後です。
【追記:2026-09-13】この記事の当初版には誤りがありました。 「2027年分から簡易課税を使うなら2026年中に届出が必要」と書いていましたが、2割特例を使った人には届出期限の特例があり、2026年中に急ぐ必要はありません。あわせて、2割特例の後継として個人事業者向けの「3割特例」が成立済みです(国税庁が令和8年4月に公表)。該当箇所を修正しました。最終確認日:2026-09-13。
これから起きることを順に並べると、①いま登録状況を確認する → ②秋のうちに「登録を続けるか」を決める(やめるなら12月に期限あり) → ③2027年の年明けに最後の2割特例で申告する → ④2027年・2028年分は3割特例を使う → ⑤2029年分から簡易課税か原則課税に移る、という流れです。この時間軸に沿って、いつ・何をするか、どこで判断が分かれるかを整理します。
いま(2026年9月):自分の立ち位置を確認する
最初にやることは、「自分はいま消費税を納める側なのか」の確認です。
インボイス(適格請求書)を発行するには、税務署に登録して「適格請求書発行事業者」になる必要があります。登録すると、売上1,000万円以下でも自動的に課税事業者となり、消費税の申告・納税義務が発生します。登録していれば登録番号(T+13桁)が通知されているので、手元の書類やe-Taxの履歴で確認してください。
現在その納税負担を抑えているのが「2割特例」という経過措置です。本来は仕入れにかかった消費税を細かく計算する必要がありますが、2割特例なら売上にかかる消費税の2割を納めるだけで済みます。副業で本格的な帳簿管理をしていない人には、計算も納税額もかなり軽い仕組みです。
よくある勘違い:「収入20万円以下だから関係ない」
所得税の「副業20万円以下は申告不要」ルールは所得税だけの話です。消費税の課税・免税は制度がまったく別で、インボイス登録して課税事業者になっていれば、収入が20万円以下でも消費税の申告・納税が必要です。「20万円ルールさえ守れば大丈夫」という感覚のままだと、この後の変化に気づけません。
よくある勘違い:「登録した時の負担がずっと続く」
「登録した年に説明を聞いただけ」で知識が止まり、2割特例が「いつまでの措置か」まで覚えていない人は少なくありません。特に「取引先から言われて登録した」人は制度変更を追いかける習慣がなく、今のままの負担が続くと思っていたら来年から急に重くなる——これが2026年後半にインボイスを見直すべき理由です。
ただし負担の増え方は、当初の想定よりゆるやかになりました。次に説明する「3割特例」が2026年度税制改正で成立し、2027年・2028年分は売上税額の3割で済むためです。
2026年秋:取引先を棚卸しして「登録を続けるか」を決める
次の工程は判断です。ポイントは「自分が免税事業者か課税事業者か」よりも、**「取引先が課税事業者かどうか」**にあります。取引先ごとに「課税事業者か・一般消費者か」をリストアップし、登録を続けるメリットがどれくらいあるか把握しましょう。登録する場合としない場合の違いは次のとおりです。
| 項目 | 登録する(課税事業者) | 登録しない(免税事業者のまま) |
|---|---|---|
| 消費税の納税 | 2026年は売上税額の2割を納税(2割特例は2026年分まで) | 納税義務なし(売上1,000万円以下が前提) |
| 発行できる請求書 | 適格請求書を発行できる | 適格請求書を発行できない |
| 取引先への影響 | 取引を敬遠されにくい | 取引先の仕入税額控除に影響し、取引縮小のリスク |
※取引先が一般消費者や免税事業者中心なら、登録しなくても影響は小さいことが多いです。2027年・2028年分は個人事業者なら3割特例(売上税額の3割)が使えます。
この時点で判断が分かれるポイント
- 取引先が主に一般消費者や免税事業者の人:登録の有無による直接的な影響は限定的です。あえて登録を取りやめて免税事業者に戻る判断もあり得ます。ただし取りやめると3割特例も使えなくなるため、どちらが軽いか比べてから決めてください。
- 取引先が課税事業者中心の人:免税事業者に戻ると相手先の仕入税額控除が減り、取引条件の見直しや発注減につながるリスクがあります。登録を続けたうえで、次の工程に進むのが現実的です。
なお、免税事業者からの仕入れについて相手先が使える控除の割合も2026年10月から変わります。2026年10月からの2年間は7割、2028年10月からの2年間は5割、2030年10月からの1年間は3割で、その後は0%です(令和8年度税制改正、通称「7・5・3割控除」)。改正前は2026年10月から5割の予定だったので、免税に戻る場合の相手先の不利は当初想定より小さくなりました。
登録を取りやめる場合の期限
2027年1月1日から免税事業者に戻るには、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を2026年12月17日までに出す必要があります。翌課税期間の初日から起算して15日前が期限で、この日が土日祝でも翌営業日に延びません。判断は税務署や税理士に相談してから決めてください。
2027年以降の計算方法:まず「3割特例」を確認する
登録を続けると決めた人の2027年以降の計算方法は、3つに分かれます。まず押さえるのは3割特例です。
選択肢1:3割特例を使う(2027年・2028年分)
3割特例は、2割特例の後継として2026年度税制改正で創設された経過措置です。正式名称は「小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置」。国税庁の資料では、個人事業者である適格請求書発行事業者の令和9年分・令和10年分について、納付税額を売上税額の3割にできるとされています。
要件と手続きは2割特例とほぼ同じです。
- 対象は個人事業者のみ(法人は使えない)
- 対象は2027年分と2028年分の申告(令和9年分・令和10年分)
- 免税事業者がインボイス登録したことで課税事業者になった課税期間に限る
- 基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下
- 事前の届出は不要。確定申告書にその旨を付記するだけ
負担は売上税額の2割から3割に増えますが、原則課税のような実額計算は要りません。副業規模なら、まずここが基本線になります。
選択肢2:簡易課税を選ぶ
簡易課税は、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を使って納税額を計算する方法です。3割特例より有利になる業種もあります。
届出期限には特例があります。原則は「適用を受けたい課税期間の初日の前日まで」ですが、2割特例や3割特例を使った人は、翌課税期間の確定申告期限までに届出を出せばその年から使えます(28年改正法附則51の2⑥、51の3⑤)。
つまり2027年分から簡易課税を使いたい場合の期限は、2027年分の確定申告期限である2028年3月末です。2026年中に急いで出す必要はありません。
選択肢3:原則課税のまま計算する
届出を出さず、3割特例も付記しなければ、仕入れにかかった消費税を実額で計算する原則課税になります。帳簿と請求書の管理が前提で、副業規模では事務負担が重くなりがちです。
よくある勘違い:「2割特例が終わったら必ず税負担が増える」
負担は増えますが、当初想定ほどではありません。2027年・2028年分は3割特例で売上税額の3割に収まります。業種によっては簡易課税のみなし仕入率がさらに有利に働く場合もあります。どちらが有利かは一度試算し、迷ったら税理士や税務署に相談しましょう。
この工程のつまずきポイント:記録がないと選べない
日々の売上・経費の記録が曖昧なままだと、どちらが有利か比べる材料がそろいません。記帳がまだ手作業の人は、確定申告3問診断で自分の申告パターンを先に整理しておくと、税理士に相談する際もスムーズです。
そのうえで、記帳そのものはクラウド会計ソフトに任せるのが早道です。日々の売上・経費が自動で記録されていれば、どちらの計算方法が有利かを比べる材料もそろいます。
2027年の年明け:「2割特例を使う最後の申告」をする
2026年分(2026年1月〜12月)の消費税の申告が、2割特例を使える最後の申告です。売上にかかる消費税の2割を納めるだけで済みます。
一番避けたいのは、**「制度が変わったことに気づかず、去年と同じ感覚で申告する」**パターンです。申告を済ませたら、「来年からは3割特例に切り替わる」「付記を忘れない」の2点をメモに残しておきましょう。
2027年・2028年:3割特例の2年間
2027年分と2028年分は、個人事業者なら3割特例が使えます。納付税額は売上税額の3割で、事前の届出も要りません。2割特例の2割から3割へ、負担は1.5倍になる計算です。
売上にかかる消費税が年10万円の人なら、納税額は2万円から3万円へ。増えはしますが、原則課税で実額計算するより事務負担は軽く済みます。
2029年分からが本番
3割特例は2028年分で終わります。2029年分からは簡易課税か原則課税のどちらかです。簡易課税を選ぶなら、3割特例を使った翌課税期間の確定申告期限まで、つまり2029年分の申告期限である2030年3月末までに届出を出せば間に合います。
3年先の話ですが、「2028年分の申告のときに一度考える」とメモしておくと取りこぼしません。
まとめ:締切から逆算した3つのアクション
- インボイス登録済みかどうかを確認する(いますぐ。T+13桁の登録番号を書類かe-Taxで確認)
- 主な取引先が課税事業者かどうかを整理する(夏〜秋のうちに。登録を続けるかの判断材料になります)
- 2027年・2028年分は3割特例が使えると知っておく(個人事業者のみ・事前届出は不要で、確定申告書に付記するだけ)
- 登録を取りやめるなら2026年12月17日が期限(2027年1月1日から免税に戻る場合。取りやめると3割特例も使えなくなる点に注意)
簡易課税の届出は2026年中に急ぐ必要はありません。2027年分から使う場合の期限は2028年3月末です。2026年のうちにやるべきは、登録を続けるかどうかの判断までです。
あわせて読みたい
参考情報
- 国税庁:小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)
- 国税庁:令和8年度税制改正特集(3割特例・7・5・3割控除・簡易課税の届出期限の特例)
- 国税庁:2割特例や3割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択(問117)
- 財務省:令和8年度税制改正の大綱
- freee:インボイス制度と副業への影響
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