個人向け国債の乗り換え、損得は利率差×残り年数
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金利の低い時期に買った個人向け国債の固定5年や固定3年を、今の高い利率に乗り換えるべきか。答えは「利率の差×残り年数」が「古い利率+新しい利率」を上回るかどうかで決まります。 中途換金では、税引後の利子のおよそ1年分が差し引かれるためです。
変動10年を持っている人は、乗り換えを考える必要はほぼありません。変動10年の利率は半年ごとに見直され、すでに今の金利水準に近づいているからです。
この記事では、手元の国債を確認するところから、10月募集分に申し込むまでを日付順に追います。制度の内容は、財務省の個人向け国債サイトで2026年10月4日に確認したものです。
手順1 持っている国債の種類と利率を確かめる
最初に見るのは「種類」「利率」「発行日」の3つです。証券会社や銀行の取引画面、または取引報告書に載っています。
| 確認する項目 | 見る理由 |
|---|---|
| 種類(変動10年・固定5年・固定3年) | 変動10年なら乗り換えの必要が薄い |
| 利率(年率) | 中途換金で引かれる額と、新旧の差が決まる |
| 発行日 | 発行から1年たっていないと換金できない |
| 満期日 | 残り年数が損得の分かれ目になる |
変動10年は利率が自動で上がっている
変動10年の利率は「基準金利×0.66」で、半年ごとに見直されます。基準金利は、利子の計算期間が始まる前月までに行われた最後の10年固定利付国債入札の平均落札利回りです。
変動10年を換金して変動10年を買い直しても、得られるのは利率の差ではなく換金のコストだけです。 数年前に買った変動10年でも、利払いのたびに利率は今の金利に合わせて動いています。
変動10年から固定5年へ移る話は、乗り換えとは別の判断になります。「今後5年間の利率を今の水準で固定したいか」を考えることになり、金利が上がり続けるなら変動10年のほうが有利です。
発行から1年未満は動かせない
個人向け国債は、どの種類も発行から1年たつまで原則として中途換金できません。例外は、口座名義人が亡くなった場合と、災害救助法が適用された災害で被害を受けた場合だけです。
1年未満の国債を持っている人は、この記事の計算をする前に「いつから換金できるか」を発行日で確かめておきます。
手順2 中途換金で引かれる額を計算する
中途換金の受取額は、財務省の計算式で「額面+経過利子−直前2回分の各利子(税引前)×0.79685」です。0.79685を掛けるのは、利子を受け取るときに20.315%の税金が引かれているためです。
利子は年2回払いなので、直前2回分とはほぼ1年分の利子です。 額面そのものは減らず、元本割れはしません。換金手数料も別途かかりません。
| 持っている国債の利率 | 額面100万円で引かれる額(税引後) |
|---|---|
| 年0.5% | 約3,984円 |
| 年1.0% | 約7,969円 |
| 年1.5% | 約11,953円 |
表の数字は「利率×100万円×0.79685」で計算した目安です。初回利子の調整や経過利子は含めていません。
ここで覚えておきたいのは、換金のコストは「古い国債の利率」で決まるという点です。低い利率で買った国債ほど、換金のコストも小さくなります。
手順3 乗り換えの損得を2つの場面で計算する
乗り換えの損得は、新しく買う国債を「満期まで持つか」「途中で換金するか」で計算が変わります。ここでは額面100万円、新しい固定5年の利率を年2.0%と仮に置いて計算します。2.0%は計算用の仮の数字で、10月募集分の実際の利率ではありません。
場面A 古い利率が低く、残り年数が長い
古い固定5年が年0.5%で、満期まで残り3年のケースです。3年後にお金を使う予定があり、新しい国債も3年後に換金すると考えます。
| 項目 | そのまま持つ | 乗り換える |
|---|---|---|
| 3年間の税引後利子 | 約11,953円 | 約47,811円 |
| 古い国債の換金コスト | なし | −約3,984円 |
| 3年後の新しい国債の換金コスト | なし | −約15,937円 |
| 手元に残る利子 | 約11,953円 | 約27,890円 |
乗り換えたほうが、約15,937円多く残ります。新しい国債を3年後に換金するコストを払っても、利率の差が大きいため取り戻せます。
場面B 古い利率がそこそこ高く、残り年数が短い
古い固定5年が年1.5%で、満期まで残り2年のケースです。こちらも2年後にお金を使う予定があるとします。
| 項目 | そのまま持つ | 乗り換える |
|---|---|---|
| 2年間の税引後利子 | 約23,906円 | 約31,874円 |
| 古い国債の換金コスト | なし | −約11,953円 |
| 2年後の新しい国債の換金コスト | なし | −約15,937円 |
| 手元に残る利子 | 約23,906円 | 約3,984円 |
乗り換えると、そのまま持つより約1万9,900円少なくなります。 換金のコストを2回払う形になり、利率の差0.5%では2年で取り戻せません。
どちらの場面にも使える判定式
2つの計算をまとめると、満期日に合わせてお金を使う人の判定式は次のとおりです。
- 「新しい利率−古い利率」×残り年数 が 「古い利率+新しい利率」 より大きければ、乗り換えが得
- 小さければ、そのまま満期まで持つほうが得
場面Aは「1.5%×3年=4.5」が「0.5%+2.0%=2.5」を上回るので得です。場面Bは「0.5%×2年=1.0」が「1.5%+2.0%=3.5」を下回るので損になります。
新しい国債を満期まで持つなら判定はゆるくなる
新しい国債を満期まで持つ予定なら、出口の換金コストはかかりません。この場合は「古い国債の換金コストを、利率の差で何年で取り戻せるか」だけを見ます。
| ケース | 換金コスト | 利率差による年間の上乗せ | 取り戻すまで |
|---|---|---|---|
| 0.5%→2.0% | 約3,984円 | 約11,953円 | 約4か月 |
| 1.5%→2.0% | 約11,953円 | 約3,984円 | 約3年 |
ただし、満期まで持つと資金を動かせない期間が延びます。残り2年の国債を5年の国債に替えれば、お金の行き先が3年先まで決まることになります。「何年後にそのお金を使うか」を先に決めないと、乗り換えの損得は判定できません。
手順4 10月の利率発表を待って数字を入れる
10月募集の個人向け国債は、利率がまだ発表されていません。財務省の募集ページでは、日程が次のように示されています(2026年10月4日確認)。
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 10月7日 | 変動10年(第199回)・固定5年(第187回)・固定3年(第197回)の利率発表 |
| 10月8日〜30日 | 募集期間 |
| 11月16日 | 発行日 |
| 11月9日〜30日 | 次回(11月募集)の募集期間 |
10月7日に利率が出たら、手順3の判定式に「新しい利率」として入れます。固定5年と固定3年の利率は、募集開始日の2営業日前の市場金利をもとに決まります。発表前の予想を当てにするより、発表された数字で一度計算し直すほうが確実です。
「募集期間中なら毎月買える」ことも判断材料になります。個人向け国債は毎月発行されるため、10月で決めきれなければ11月募集で同じ計算をしても遅くありません。
手順5 換金と申し込みの順番を決める
乗り換えると決めたら、換金と新規の申し込みを次の順番で進めます。
- 国債を持っている金融機関で、中途換金を申し込む
- 換金した代金が口座に入るのを待つ(申し込み日を含めておおむね3営業日後)
- 募集期間内に、新しい国債を申し込む
- 発行日(10月募集分は11月16日)以降、取引画面で新しい国債の利率と満期日を確認する
換金代金の入金には数日かかるため、10月募集分に乗り換えるなら募集締め切りの10月30日ぎりぎりではなく、余裕を持って換金を申し込みます。換金は1万円単位でできるので、全額ではなく一部だけ乗り換える方法もあります。
新しい国債は、換金した金融機関とは別の証券会社で買っても問題ありません。証券口座で買う場合は、個人向け国債を扱っている証券会社を選びます。楽天証券は個人向け国債を扱っており、1万円から購入手数料なしで買えます(楽天証券の個人向け国債ページより)。
乗り換え前に確かめておきたい注意点
乗り換えの計算に入らないコストや制約が、3つあります。
- 換金できない1年間ができる:新しい国債も発行から1年は換金できません。1年以内に使う予定のお金は乗り換えに向きません
- 計算は目安:初回利子の調整や経過利子を省いて計算しています。実際の受取額は、換金を申し込む金融機関で確認できます
- 金利がさらに上がる可能性:固定5年に乗り換えた後に金利が上がれば、もう一度同じ判断が必要になります。金利の先行きに自信がなければ、変動10年という選択肢も残ります
国債は「乗り換えれば得」とも「動かさないのが正解」とも言い切れない商品です。 古い利率・新しい利率・残り年数の3つの数字がそろえば、損得は数分で計算できます。
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参考情報
最終確認日:2026-10-04。10月募集分の利率は10月7日に財務省から発表されます。最新の情報は財務省の個人向け国債サイトでご確認ください。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。