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住宅ローン

住宅ローンの団信、どこまで手厚くする?


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住宅ローンを組むとき、金利や借入額ばかりに目が行きがちですが、実はもうひとつ「あとで大きく差が出る選択」があります。それが団信(だんしん)=団体信用生命保険です。

この記事では、「銀行にすすめられるまま決めそうになった」ひと組の夫婦をモデルに、団信をどこまで手厚くするかを金額で決めるまでの道のりを順に追っていきます。制度・金利の水準はいずれも一般的な目安です(最終確認日:2026-07-03)。

モデル家計:佐藤さん夫婦(説明のための架空のモデルです)

  • 夫:35歳・会社員・年収550万円
  • 妻:33歳・会社員(時短勤務)・年収300万円
  • 子ども:2歳がひとり
  • 購入予定:4,200万円の建売住宅。頭金700万円、借入3,500万円・35年・変動金利 年1.0%(夫の単独名義)
  • 加入中の保険:夫は死亡保険金3,000万円の定期保険(月4,800円)と医療保険(月2,300円)。がん保険は未加入

銀行の担当者からは「がん100%保障団信(金利+0.1%)を付ける方が多いですよ」と言われ、夫はその場でうなずきかけました。妻の「それ、いくら払うことになるの?」という一言で、いったん持ち帰ることに。ここから佐藤さん夫婦の検討が始まります。

まず前提の確認:団信は「何もしなくても付いている」

調べてみると、団信は住宅ローンを借りた人が亡くなったり高度障害になったりしたときに、残りのローンをゼロにしてくれる保険で、多くの民間ローンでは基本の団信が金利に含まれ、追加負担なしで自動的に付いていると分かりました。

つまり佐藤さんが決めるべきなのは「団信に入るかどうか」ではなく、**「基本の団信に、がんや病気の保障を上乗せするかどうか」**です。保障を足すほど安心ですが、その分だけ金利が上乗せされ、35年という長い返済期間でジワジワと総返済額に効いてきます。夫婦は「団信は保険であると同時に、金利という名の保険料を毎月払い続ける仕組みなんだ」とノートの1行目に書きました。

検討1日目:「+0.1%」を金額に直してみる

銀行にすすめられた上乗せは、2026年時点でおおよそ次のような水準です(金融機関により異なります。最終確認日:2026-07-03)。

  • がん100%保障:年0.1〜0.2%程度の上乗せ(みずほ銀行は年0.1%、auじぶん銀行は年0.05%、ソニー銀行は年0.2%。がん50%保障は無料付帯の銀行もあります)
  • 三大疾病保障:年0.2〜0.3%前後が目安(三菱UFJ銀行の3大疾病50%プランは年0.15%など、保障割合で変わります)
  • ワイド団信:年0.2〜0.3%程度の上乗せ

「0.1%くらいなら」というのが夫の第一印象でした。そこで妻が、元利均等返済の計算式(毎月返済額 = 借入額 × 月利 × (1+月利)の返済回数乗 ÷ ((1+月利)の返済回数乗 − 1)。月利=年利÷12、返済回数=35年×12=420回)に、自分たちの条件(借入3,500万円・35年・基準金利 年1.0%)を当てはめてみます。

上乗せ金利毎月返済額毎月の負担増35年総額の負担増
なし(年1.0%)約98,800円
+0.1%(年1.1%)約100,440円約1,640円約69万円
+0.2%(年1.2%)約102,096円約3,296円約138万円
+0.3%(年1.3%)約103,769円約4,969円約209万円

※筆者計算による概算値。実際は端数処理や金利変動で変わります。

数字を見た夫婦は黙りました。すすめられた「がん団信+0.1%」は、35年トータルで約69万円の保険料を払うのと同じ意味だったのです。「69万円のがん保険」と言われていたら、その場でうなずいたりはしなかったはず。小さな数字ほど、長い年月をかけて大きな差になる——これが団信の一番の落とし穴でした。

ここで夫婦の問いは変わります。「付けるか付けないか」ではなく、**「約69万円で買うこの保障は、いま入っている保険と比べて割に合うのか?」**です。

検討2日目:保険証券を並べて「二重カバー」を洗い出す

翌日、夫婦は加入中の保険証券をテーブルに並べました。やることは3つです。

  1. 保険証券を並べる:加入中の死亡保険・医療保険・がん保険の保障額と月額保険料を一覧にする
  2. 団信でカバーされる分に印を付ける:基本の団信なら「死亡・高度障害時の住居費」、がん団信なら「がん診断時のローン残債」がカバー済み
  3. 民間保険の減額を検討する:死亡保険金を「遺族の生活費+教育費」だけに絞り、住居費分を減額できないか保険会社に確認する

佐藤さんの場合、夫の定期保険3,000万円は「遺族の生活費+住居費+教育費」のつもりで入ったものでした。ところが基本の団信でローンがゼロになる以上、万一のとき家族には「住まい」が残ります。つまり、死亡保険で用意すべき金額から住居費分を差し引ける——ここを整理しないと、同じリスクに二重でお金を払うことになります。

試算してみると、死亡保険金を3,000万円から2,000万円に減額すれば月々の保険料は約1,500円下がり、35年で約63万円。仮に月3,000円減らせる契約なら35年で約126万円です。がん団信+0.1%(約69万円)を付けても、民間保険の減額とセットなら家計全体ではプラスになり得る——夫婦はここで初めて「付ける選択肢もアリだ」と思えるようになりました。

一方で、これは佐藤さんが「守る家族がいて、減らせる保険に入っていた」から成り立つ話です。独身で守る家族がいない人なら、そもそも手厚い団信の必要性自体が下がります。

検討3日目:がん・三大疾病・全疾病、どこまで広げるか

がん団信を前向きに考え始めると、今度は銀行のパンフレットにある「三大疾病」「全疾病」の文字が気になってきました。整理すると次のとおりです。

タイプ保障が出る主な条件上乗せ金利の目安向いている人
基本の団信死亡・高度障害+0%(無料付帯が多い)全員(自動付帯)
がん団信(50%)がん診断でローン半減+0%〜0.05%程度無料〜低コストなら付けて損が少ない
がん団信(100%)がん診断でローンゼロ+0.1〜0.2%家族にがん罹患歴があり不安が大きい人、がん保険未加入の人
三大疾病がん・急性心筋梗塞・脳卒中(所定の状態が条件)+0.2〜0.3%医療保険が手薄で、心疾患・脳卒中の家族歴がある人
全疾病(8大・11大等)病気やケガで働けない状態が一定期間続いた場合+0〜0.3%(無料付帯の銀行もあり)自営業・フリーランスなど公的保障(傷病手当金)が薄い人
ワイド団信持病があっても入りやすい緩和型+0.2〜0.3%健康上の理由で通常の団信に入れない人

このとき夫が商品説明書で見つけて驚いたのが、支払条件の細かい文字です。検索で確認できる代表的な例として、

  • がん団信は加入からおおむね90日間は保障の対象外
  • 上皮内がん(初期のがんの一部)は対象外となる商品がある
  • 三大疾病や全疾病では「所定の状態が60日以上継続」「所定の手術を受けた場合のみ」といった条件が付くことがある

つまり「病気になれば無条件でチャラ」ではありません。パンフレットの数字ではなく、商品説明書の支払条件を読むかどうかで満足度が変わります。詳しい条件は必ず各金融機関の最新の商品説明でご確認ください。

三大疾病(+0.2〜0.3%=35年で約138万〜209万円)については、佐藤さんは会社員で傷病手当金などの公的保障があること、医療保険にも入っていることから「そこまでは広げない」と判断。逆にもし夫が自営業なら、働けない期間の収入減を埋める全疾病タイプの優先度が上がっていたはずです。

あわせて調べる中で、あとから効いてくる2つのルールも分かりました。ひとつは、がん団信は50歳前後で加入できなくなる金融機関が多いこと(例:申込時50歳未満など)。もうひとつは、団信の特約はローン契約時にしか選べず、途中からの追加はできない金融機関がほとんどだということです(外すことは可能な場合あり)。あとから手厚くしたくなったら借り換えが必要になるため、「迷ったら後で」が通用しない選択でした。35歳の佐藤さんには時間の余裕がありますが、40代後半で検討している人ほど、健康なうちの早めの判断が得策です。

佐藤さん夫婦の結論と、その理由

3日間の検討を経て、佐藤さん夫婦はこう決めました。

  • がん100%保障団信(+0.1%)を付ける——夫はがん保険未加入で、父親にがんの罹患歴があった。35年約69万円は、いまから民間のがん保険に入る保険料総額と比べて大きな差がなく、「ローン残債が消える」保障の分かりやすさを取った
  • 死亡保険は3,000万円から2,000万円に減額——団信で住まいが残る分を差し引いた。月約1,500円・35年で約63万円の節約になり、がん団信の上乗せ分とほぼ相殺
  • 三大疾病・全疾病は付けない——会社員の公的保障と医療保険で足りると判断した

大事なのは、この結論そのものではありません。同じ検討をしても、家族構成・健康状態・加入中の保険が違えば結論は変わります。がん50%保障が無料付帯の銀行なら付けない理由はほぼありませんし、すでに手厚いがん保険に入っている人なら「団信は基本のみ、民間保険を維持」に寄せた方が家計全体の保険料は抑えられます。佐藤さんの道のりから持ち帰ってほしいのは、「上乗せ金利を35年分の金額に直す」「手持ちの保険と重複を洗い出す」という手順のほうです。

とはいえ、団信・生命保険・住宅ローンをまたいだ最適化は、一人で全体像を描くのが難しい分野です。中立の立場で家計全体を見てくれる無料のFP相談を、判断材料を増やす目的で使うのも一つの手です。特定の商品を売りつけられないか不安な方は、事前に「見直しの相談だけしたい」と伝えておくと安心です。

あなたが今日からできる3つのこと

  • 今検討中のローンの「団信の商品説明書」を1枚だけ開く:支払条件(90日ルール・上皮内がんの扱い・◯日以上継続などの条件)に線を引いてみましょう
  • 加入中の保険証券を3枚並べる:死亡・医療・がんの保障額をメモし、団信と重複しそうな部分を洗い出します
  • 上乗せ金利を金額に直す:本記事の表を参考に、自分の借入額・期間で総額いくらになるかをざっくり計算しておきます

団信は「安ければ得」でも「手厚ければ安心」でもなく、あなたの家計と既存の保険に対して過不足のない量に整えることがゴールです。佐藤さん夫婦がそうしたように、今日、商品説明書を1枚開くところから始めてみてください。

参考情報

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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品や保険の勧誘ではありません。佐藤さん夫婦は説明のための架空のモデルです。投資・保険加入の判断はご自身の責任でお願いします。団信の保障内容・支払条件・上乗せ金利は金融機関や時期により異なるため、契約前に必ず各社の最新の商品説明書をご確認ください。