副業

Kindle出版の印税、500円の本で317円


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「印税70%」。Kindle出版(KDP)を紹介する記事で、まず目に入るのがこの数字です。紙の本の印税が5〜10%と言われるなかで、70%は確かに破格に見えます。

ですが、この70%は販売ページに表示されている金額に対する70%ではありません。税込500円で売っている本が1冊売れたとき、著者の口座に向かうのは350円ではなく、およそ317円です。差の33円がどこへ消えるのかを知らないまま冊数計画を立てると、「思ったより入らない」で終わります。

この記事では、Amazonの公式ヘルプに書かれている計算式だけを使って、1冊あたりの実額を出します。

先に結論:税込500円の本、1冊で約317円

計算の順番はこうです(Amazon.co.jpで販売、KDPセレクト登録で70%を選んだ場合)。

  1. 希望小売価格から消費税を抜く:500円 ÷ 1.1 = 約454円
  2. 配信コストを引く:日本のマーケットプレイスでは1MBにつき1円。ファイルサイズ2MBなら2円を引いて452円
  3. 残りに70%を掛ける:452円 × 0.7 = 約317円

表示価格500円に対する実際の取り分は、約63%。「70%」という数字自体は嘘ではありませんが、掛ける相手が表示価格ではないというのが最初のズレです。

同じ本を35%のロイヤリティで売った場合はこうなります。

  • 454円 × 0.35 = 約159円(35%を選んだ場合、配信コストは差し引かれません)

1冊あたりの差は158円。100冊で1万5,800円の違いになるので、この選択は無視できません。

差し引かれる3つの正体

1. 消費税(表示価格の約9%)

日本国内の読者に販売される電子書籍には10%の消費税がかかります。KDPで設定する希望小売価格は税込の金額で、ロイヤリティは消費税を差し引いた本体価格から計算されます。500円なら約45円が最初に外れる計算です。ここは著者の努力でどうにかなる部分ではありません。価格は「税込でいくらか」ではなく「税抜でいくらか」で考えると、あとで数字がずれません。

2. 配信コスト(1MBにつき1円)

70%を選んだ場合だけ、ファイルの配信費用が売上から引かれます。日本のマーケットプレイスは1MBあたり1円。文章中心の本なら1〜3MB程度に収まることが多く、影響は数円ですが、写真や図版を大量に入れた本ではここが効いてきます。

ひとつ知っておくとよいのが、Amazonの公式ヘルプに書かれている例外です。日本での販売では、10MB以上の書籍については配信コストが差し引かれません。図版の多い本を作るなら、中途半端に重い状態が一番不利になる、ということです(最終確認日:2026-07-26)。

3. 70%を選べる価格の範囲

70%のロイヤリティは、どんな価格でも選べるわけではありません。Amazon.co.jp向けの公式の価格帯は次の通りです。

  • 70%:250円以上 1,650円以下(税込)
  • 35%:99円以上 20,000円以下(税込)

さらに、日本の読者への販売で70%を適用するには、KDPセレクトへの登録が条件になります。

ネット上の解説記事には「70%の上限は1,250円」と書かれたものが今も多く残っていますが、2026年7月26日時点の公式ヘルプでは上限は1,650円です。価格の上限や下限は変更されることがあるので、値付けの直前には必ず公式ページで確認してください。

35%と70%、どちらを選ぶか

「70%のほうが得に決まっている」と言い切れないのは、70%にはKDPセレクトの縛りが付くからです。

Kindle出版 | ロイヤリティの選択

35%と70%、何が違うか

税込500円・ファイル2MBの電子書籍で比べた場合

1冊あたりの取り分販売先の自由度読み放題(KU)の収益
35%プラン KDPセレクト登録なしでも可 約159円 他ストアでも販売できる × 対象外
70%プラン KDPセレクト登録が条件 約317円 × 90日間はAmazon独占 既読ページ数に応じて加算
  • ※取り分は税込500円・2MBで試算。配信コストは日本の場合1MBにつき1円(70%選択時のみ差し引き)
  • ※70%を選べるのは希望小売価格250円以上1,650円以下(税込)の範囲。最終確認日:2026-07-26

資産化計画

判断の分かれ目は、すでに自分の読者を他の場所(noteやSNS、自分のブログ)に持っているかどうかです。他で売る当てがないうちは、独占の縛りは実質的なコストになりません。逆に、すでにnoteなどで売れている人が90日の独占に入ると、既存の売り先を止めることになります。

読み放題で読まれたら、いくら入るのか

KDPセレクトに登録すると、その本はKindle Unlimited(読み放題)の対象になります。ここでの収益は「1冊売れていくら」ではなく、読まれたページ数(KENP)に応じた分配です。

Amazonの公式説明によると、計算はこうなっています。

  • 毎月「KDPセレクト グローバル基金」の総額が決まる
  • その基金を、全参加作品の既読ページ数で按分する
  • 支払いは、読者が初めて読んだページが対象(同じ人が読み返しても加算されない)
  • 1人の読者・1冊につき、上限は3,000 KENP

1ページあたりの単価は固定ではなく毎月変動します。近年はおおむね1ページ0.4〜0.5円前後で推移していると各所で報告されていますが、これは公式に保証された数字ではありません。仮に0.45円として、200ページ相当の本を最後まで読まれた場合で90円前後。購入1冊(約317円)の3分の1程度です。読み放題は「単価は低いが読まれる確率が上がる」仕組みだと理解しておくと、期待値の見積もりを外しません。

実際の冊数感:月3万円に何冊必要か

税込500円・70%プランで1冊317円とすると、購入のみで考えた場合の目安はこうなります。

月の売上目標必要な販売冊数(月)
5,000円約16冊
1万円約32冊
3万円約95冊

無名の著者が1冊目でいきなり月95冊を売るのは現実的ではありません。だからこそ、Kindle出版を「1冊で当てる副業」ではなく、タイトル数を積み上げて読み放題の既読ページを稼ぐストック型と捉えている人が多いわけです。

ここで一度立ち止まってほしいのが時間です。1冊書き上げるのに50〜100時間かかる人は珍しくありません。年間で3万円台なら、時給に直すといくらになるか。実質時給計算機に、かけた時間と受け取った金額を入れてみてください。数字を見てから続けるかを決めるほうが、なんとなく続けるより健全です

なお、原稿は書けても表紙作成・EPUB化・KDPの入稿設定でつまずいて止まる人も少なくありません。「書く時間はあるが、技術的な工程で止まっている」人には、そこだけ外注して出版まで通すという選択肢があります

入金の遅さと、税金という最後の差し引き

1冊317円という数字は、まだ「税引き前」です。最後にふたつ、現金の実感に関わる話をしておきます。

入金は思ったより遅い。Amazonの公式説明では、ロイヤリティは最低支払額に達していれば、売上が報告された月の末日から約60日後に支払われます。7月に売れた分が手元に届くのは、9月末ごろということです。月次の家計に組み込むには2か月のズレがあると考えておいてください。

税金は自分で扱う。会社員が副業でKindleの印税を受け取る場合、多くは雑所得になります。給与以外の所得が年20万円以下なら所得税の確定申告が不要になるケースがありますが、住民税の申告は20万円以下でも必要です。

印税の入金明細と、経費にした書籍代や外注費を1年分手作業で集計するのは思った以上に面倒です。記帳を後回しにした人ほど、翌年の2月に慌てます。売上が立ち始めたら、口座やカードと連携して自動で集計してくれる会計ソフトを早めに入れておくと、確定申告の作業がぐっと短くなります。

今日からできる具体アクション

  1. 想定価格の税抜額を出す。価格 ÷ 1.1 が計算の出発点です。ここを飛ばした試算はすべてずれます。
  2. 70%を選べる価格帯(250円以上1,650円以下・税込)に収まっているか確認する。250円を下回ると、日本では35%しか選べません。
  3. KDPセレクトに入るかどうかを、独占の縛りとセットで決める。他に売り先がないなら70%、すでに他で売れているなら35%から検討します。
  4. 1冊あたりの取り分 × 現実的な販売冊数で、年間の見込み額を先に出す。20万円を超えそうかどうかで、必要な準備が変わります。

よくある質問

Q. 価格はいくらに設定するのが有利ですか?

A. 一概には言えませんが、70%を選びたいなら税込250円以上が必須条件です。単価を上げれば1冊あたりの取り分は増えますが、無名の著者ほど高単価は売れにくくなります。まず70%が使える範囲に入れたうえで、読者が試し買いしやすい価格から始めるのが一般的な考え方です。価格帯の上限・下限は変わることがあるので、値付けの前に公式ヘルプで最新の数字を確認してください。

Q. KDPセレクトの90日間の独占は、途中でやめられますか?

A. 登録期間は90日間で、期間終了後に自動更新される設定になっています。自動更新をオフにすれば次の期間には入りませんが、期間中の任意解除は原則できません。取り扱いの詳細と最新の条件は、KDPの公式ヘルプでご確認ください。

Q. 印税はいつ振り込まれますか?

A. 最低支払額に達していれば、売上が報告された月の末日から約60日後に支払われます(外部流通経由の販売は約90日後)。振込が銀行口座に反映されるまで、さらに1〜5営業日かかることがあります。

Q. 副業の印税が年20万円以下なら、何もしなくていいですか?

A. 所得税の確定申告が不要になる場合はありますが、住民税の申告は別途必要です。「20万円以下=何もしなくていい」は誤解なので、お住まいの自治体のルールを確認してください。

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参考情報

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。